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第2章 宇宙の謎に迫る(2)


11.見えない物質「ダークマター」の正体

12.宇宙にも万里の長城がある!

13.宇宙は無数に誕生した?!

14.宇宙の年齢は実のところ何歳?

15.宇宙の「年齢」が、宇宙の「果て」であり「大きさ」でもあるってどういうこと?

16.ブラックホールは蒸発する!

17.超ひも理論は、二一世紀の新しい物理学か?

18.銀河はやがて、ひっそりと死ぬ

19.私たちの銀河系はこうなっている

20.この銀河系には、知的生命体の住む星がいくつあるか?

21.人間原理の宇宙とは何ぞや?

<コラム>
世界最高性能の望遠鏡「すばる」がハワイに


11.見えない物質「ダークマター」の正体

  宇宙創成からインフレーションをへて、宇宙がある落ちついた速度で膨張しているときを考えよう。このときの膨張速度vが宇宙の大きさによって決まる臨界速度よりも大きいと、高速なロケットが地球の重力をふり切ってどこまでも飛んでいくように、宇宙も宇宙の重力(銀河間に働く重力)をふり切って永久に膨張しつづける。これは開いた宇宙である。
 速度vが臨界速度よりも小さいと、速度の足りないロケットがいずれ地球の重力に負けて落下するように、宇宙も宇宙の重力に負けて収縮に転ずる。これは閉じた宇宙だ。そして、速度vが臨界速度に等しければ、そこそこの速度のロケットが、やがて地球の重力と折り合いをつけて地球のまわりを回りつづけるように、宇宙も宇宙の重力と折り合いをつけつつ自然な状態を保つ。宇宙というのは静止することはないので、ここでいう自然な状態とは慣性的な自然膨張である。これは平坦な宇宙だ。インフレーション説では、この平坦な宇宙を予言している。
 結局、膨張速度vが臨界速度よりも大きいか小さいか、あるいはそれに等しいかで宇宙の未来が決まるわけだ。臨界速度は計算によって求めることができる。そしてその臨界速度にはそれに対応する重力の値というものが存在し、その重力は宇宙の物質密度によって決まる。この物質密度のことを「臨界密度」というが、これを現在の値として計算すると、1立方cmあたり10-29グラムになるらしい。実際の宇宙の物質密度がこれと等しければ平坦な宇宙、これより大きければ宇宙の重力のほうが勝ちをおさめるはずだから閉じた宇宙、小さければ開いた宇宙ということになる。これはもとより宇宙の物質密度が一様であるとしての話だ。
 実際の観測結果から推定される値は、10-29グラムをはるかに下回る値だという。これを信ずるなら、宇宙は開いていることになる。しかし、私たちの宇宙は見た目には平坦に見える。インフレーション説も宇宙は平坦だとしている。とすれば、宇宙にはもっと物質がなければならない。そこでクローズアップされてきたのが、見えない暗黒物質“ダークマター”だ。
 この物質の存在は、彗星の雲(第3章の18参照)を唱えたことで知られるオランダの天文学者オールトも指摘していた。銀河系の重力は銀河系の恒星に上下運動を生じさせているが、その上下運動を見るかぎり、銀河系の重力は見えている星の倍以上もないと計算に合わないというものだ。物質が失われているということからミッシング・マスと名づけられた。これは一九二七年に提起された問題だが、一九六〇年代以降になると、ダークマターの存在を指摘する報告はいっきに増え始めた。
 ダークマターの第一候補は、ブラックホール、中性子星(前項参照)、白色矮星、褐色矮星などの光を発しない暗い天体や、ニュートリノである。第二候補は、その存在が理論的には予言されているが現実には見つかっていない物質だ。アクシオン、超対称性粒子(フォティーノ、グラビティーノ等*)、モノポール(磁気単極子)などがそうである。
 ダークマターは、見えているすべての星の数十倍の質量をもつと推定されている。

* フォティーノはフォトン(光子)、グラビティーノはグラビトン(重力子)の超対称性粒子である。

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12.宇宙にも万里の長城がある!

 電波望遠鏡や人工衛星望遠鏡(宇宙望遠鏡)、そしてスーパーコンピュータなど、現在の宇宙観測技術は格段に進歩している。この強力な武器のおかげで、宇宙の構造はかなり明らかになってきた。
 それによると、この宇宙はどうやら、一つひとつの泡に数千から数万の銀河を含むたくさんの銀河団や超銀河団が手をつなぐように貼りついたシャボン玉構造になっているらしい。このシャボン玉構造が、フェンスのように四億光年ごとに規則正しくいくつも並んでいるという。中には、うねる壁のように延々と伸びるものも確認されており、グレートウォール(万里の長城)と名づけられている。長さ五億光年、幅一五〇〇万光年、高さ二億光年という宇宙最大の大規模構造だ。シャボン玉の個々の泡の中は完全な空洞で、ボイドと呼ばれる。ボイドの大きさは三〇〇〇万〜一億光年ぐらいだ。
 もう一つ、宇宙には不可解な出来事がある。私たちの銀河系が属する銀河団、そしてその銀河団を含む超銀河団が、ある方向へ向けてすごいスピードで引っ張られているというのだ。はるか数億光年の彼方に、何かとてつもなく莫大な重力源が潜んでいるらしく、その重力を生み出している質量は、太陽質量の1019倍と推測されている。
 このような宇宙が一様であるはずはない。これについて、インフレーション説が用意した答は、宇宙創成の直後、インフレーションの前に宇宙に生じた「ゆらぎ」であった。このゆらぎがインフレーションによって引き伸ばされ、宇宙物質の創成時において物質密度と物質分布に凹凸をもたらした。物質密度の濃いところは、それがタネとなって時間の流れとともにそのタネにより多くの物質が集まり、銀河となった。また、物質分布の凹凸は宇宙に大規模構造をもたらしたというわけだ。
 この宇宙物質創成時の物質密度、物質分布の凹凸は、光の進行をさまたげもするし、たすけもするから、宇宙の晴れ上がり(本章の9参照)の際に放散した光エネルギーの分布にも、それなりのゆらぎが生じたはずである。したがって当時の光の残存である宇宙背景放射にも、多少の温度のゆらぎがあると思われる。事実、アメリカの宇宙背景放射観測衛星「COBE(コービー)*」は、一〇万分の一ほどの温度のゆらぎをとらえた。
 ただCOBEの観測データはまだラフなものであり、写真でいってみればピンボケといったようなレベルだ。そこで、さらに観測精度を高めた観測衛星が、インフレーション説の真偽を確かめるべく打ち上げられる予定となっている。

* COsmic Background Explorerの略。一九八三年に打ち上げられた世界初の赤外線観測衛星IRASに次いで、一九八九年にNASAが打ち上げた世界で二番目の赤外線観測衛星。日本の宇宙科学研究所も、二〇〇二年にIRASをしのぐ性能をもつIRISを打ち上げる予定。

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13.宇宙は無数に誕生した?!


 本章の7で、宇宙創成時の「真空の相転移」の話をした。この相転移は実は、水が沸騰してボコボコ泡だつように宇宙の種子のあちこちで同時多発的に発生したという。
 これが本当だとすると、それぞれの相転移はそれぞれの宇宙を生じさせたはずである。宇宙出現時の真空のエネルギーにもゆらぎがあったというから、低いエネルギーのところでは相転移は遅れ、インフレーションも起こらず、宇宙は小さくゆるやかに成長するか、収縮に転じていったであろう。一方、高いエネルギーのところでは、相転移に先だってインフレーションも起こり、宇宙は大きく成長していったであろう。
 こうしてできたそれぞれの宇宙の真空でも、やはり二次的、三次的な相転移が起こってさらに新たな宇宙を生じさせたというから、結局、親宇宙からいくつもの子宇宙が生まれ、さらに孫宇宙、ひ孫宇宙と、宇宙が次々にネズミ算式に増えていったと考えられる。私たちの宇宙は、その中のどれなのだろう。
 これらの宇宙の中には、エネルギーが十分ではなく、そのまま冷えてしまった静かな宇宙や、インフレーションが途中で止まってしまい、つぶれてしまった宇宙もあるだろう。また、物質の素になる粒子をつくり出し、私たちの宇宙と同じようになった宇宙もあるかもしれない。
 これらの宇宙の誕生は時間にしてみれば瞬時のことである。したがって、親も子供も、孫もひ孫もあったものではなく、これら無数に近い宇宙がひしめき合うこととなる。私たちは、これらの宇宙の存在を知ることはできるのだろうか?
 親宇宙と子宇宙、子宇宙と孫宇宙、孫宇宙とひ孫宇宙・・・のそれぞれの親子のつながり部分は、ひどくつぶれていると考えられる。子宇宙が親宇宙から枝分かれして猛烈な勢いで膨張するとき、両者の間がぎゅっとつぶれるからだ。この部分のことをアインシュタイン−ローゼン・ブリッジというが、最近ではワームホール(虫食い穴)といっている。ワームホールの中はものすごい密度になっており、その重力はすざまじく、まさにブラックホールみたいになっている。いわゆる事象の地平線である。これによって親宇宙と子宇宙の因果関係は完全に遮断されてしまうので、情報のやりとりはできない。つまり私たちは、他の宇宙の存在を知ることはできないのだ。

※図は「壷の中の宇宙」(佐藤勝彦著、二見書房刊)より引用

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14.宇宙の年齢は実のところ何歳?

 宇宙の膨張を決定づける歴史的な観測をなしとげたハッブルは、その観測結果から次のような法則を導いた。
 「銀河が遠ざかる速度vは、銀河までの距離rに比例する。すなわちv=Hrである」
 これをハッブルの法則といい、定数のHをハッブル定数という。遠方の銀河ほど、遠ざかる速度が大きいわけである。といっても、それは銀河自身が動いているのではなく、銀河をとりまく宇宙空間が膨張している結果なのである。また、あるところから見てさまざまな距離にある銀河たちは、それぞれが異なる速度で遠ざかるけれども、その遠ざかる速度はつねに一定である。宇宙の膨張率はどこもつねに一定なのでそうなるのだ。これを宇宙の一様な膨張という。ジョージ・ガモフの唱えたビッグバン以降に宇宙が安定した膨張を始めてからは、宇宙は一様に膨張しているとするのが現在の宇宙理論の立場である。
 宇宙膨張の一様性から、「ハッブル定数の逆数は宇宙の年齢である」という帰結が得られる。そのわけを以下に説明しよう。
 いま、点Aから宇宙が誕生して、1秒後にその大きさが2cmになったとしよう。点Aから見た宇宙の果ては2cmのところで、そこが遠ざかる速さは毎秒2cmだ。宇宙の中間点は1cmのところで、そこの遠ざかる速さは毎秒1cmである。点Aから見たこのときのハッブル定数(遠ざかる点の速さ/その点までの距離)は、宇宙の果てが2/2、中間点が1/1、すなわちともに1である。
 宇宙の膨張は一様だから、次の1秒後には、点Aから見た宇宙の果てはさらに2cmだけ遠ざかり、宇宙の中間点は1cmだけ遠ざかる。このときの点Aから見たハッブル定数は、宇宙の果てが2/4、中間点が1/2、すなわちともに1/2である。次の1秒後におけるハッブル定数は1/3になることは、容易に察しがつくであろう。
 宇宙誕生から1秒後のハッブル定数は1、2秒後のそれは1/2、3秒後のそれは1/3*。ハッブル定数の逆数が、宇宙誕生以来の時間となることは、これで明白である。
 ハッブル定数は、ある銀河の遠ざかる速さと、そこまでの距離がわかれば簡単に得ることができる。問題は観測精度で、ハッブル自身が観測して得たハッブル定数にもとづく宇宙の年齢は二〇億年だった。現在ではそれが一五〇億年にまで伸ばされている。
 ところが、最近になって宇宙の年齢は大きくゆらぎ始めた。まず、ハッブル宇宙望遠鏡が観測したハッブル定数は、現在標準とされているハッブル定数よりもかなり大きかった。これはハッブル定数の逆数が小さくなること、すなわち宇宙の年齢が若返ることである。八〇億〜一〇〇億年くらいの値になるという。また、最新技術を動員して得られた地上からの観測でも、ハッブル定数は標準よりも大きい値となり、宇宙年齢は一〇〇億年以下と出た。
 その一方で、宇宙はもっとうんと高年齢だという推測もなされている。前項で紹介した宇宙の大規模構造ができ上がるためには、少なくとも六〇〇億年はかかるというのだ。宇宙の年齢はまたもや、混沌におちいってしまった。

* ハッブル定数はこのように、時間とともに変わる値だから、本来は定数とはいえない。しかし、人間が問題にする時間内での宇宙の膨張などゼロに等しいから、定数として扱っても差しつかえないのである。

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15.宇宙の「年齢」が、宇宙の「果て」であり「大きさ」でもあるって、どういうこと?

 ハッブルの法則によれば、遠方にある銀河ほど高速で遠ざかる。十分に遠方にある銀河は、ついにはこの世の最高速度である光速で遠ざかるであろう。そしてそれより遠いところからは原理的に光は届かない。情報がこない世界は「あってもない世界」であり、そっちの世界のことはわかりようがない。したがって、光速で遠ざかる銀河をもって宇宙の果てとするほかはないであろう。つまり、そこが「宇宙の地平線」である。
 さて、宇宙の大きさとは何であろう。自分がいるところから宇宙の果て(光速で遠ざかる銀河)までの距離であろうか。それとも、開闢時以来現在まで膨らみつづけてきた宇宙の膨張距離であろうか。これは実はどちらも正しいのである。それがどうしてなのか、これからお話しよう。
 いま、光速で遠ざかる銀河を観測しているとする。この銀河までの距離 R はハッブルの法則から R=c/H である(前項参照)。また、ハッブル定数の逆数である 1/H は前項でも示したように宇宙年齢であるから、これを T とおくと式は R=cT となる。
 この式はある意味で奇妙な式である。なぜなら、この銀河は宇宙年齢時間 T をかけて自らの光を現在に届けているとも解釈できるからである。宇宙年齢時間をさかのぼって観測される銀河の姿ということであるから、この銀河はまさに宇宙開闢時の銀河である。
 これらのことから、R というのは宇宙の果てまでの距離であり、かつ、宇宙開闢時の銀河から発せられた光が、宇宙年齢時間をかけて膨張する宇宙空間を伝わって現在に到達するまでにたどってきた距離ということでもある。これが、前述の問いに対する答えである。
 宇宙における距離は通常「光年」で表わされる。宇宙の大きさを光年で表わすには、R の値を光が一年に進む距離で割ればよい。光が一年に進む距離は一年を t 秒とすると ct である。「R=cT」であるから、cT を ct で割ったものが、光年で表された宇宙の大きさだ。この値は T/t となる。T/t 光年ということだ。
 T/t というのは、宇宙年齢 T を一年間の秒数 t で割ったものであるから、年単位で表わされた宇宙年齢である。これは現在一五〇億年とされているから、宇宙の大きさは一五〇億光年となる。つまり、年単位として表わされた宇宙年齢(ハッブル定数の逆数)に「光年」をくっつけさえすれば宇宙の大きさ(宇宙の果てまでの距離)となる。ハッブル定数がいかに重要な意味合いをもつかが、これでわかるだろう。

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16.ブラックホールは蒸発する!

 ブラックホールの存在を初めて予言したのは、一八世紀末の天才数学者、ラプラスだ。彼のいうブラックホールとは、ちょっと毛色の変わったものである。たとえば地球をうーんと大きくしていくと、地球からの脱出速度はどんどん大きくなり、ついには光速以上になる。こうなると光すらも地上に“落下”してしまう。光は地球から出られないから、他の星からは地球について何も知ることはできない。つまり、地球はブラックホールと化すのである。
 現在でいうブラックホールとは、重い星が燃えつきたあと重力によってどんどん収縮していき、ついには光をも引きつけてしまうという世界だ。光が出てこないので、そこがどうなっているのかわかりようがない。そこで、ブラックホールの入り口のことを「事象の地平線」と呼ぶ。この地平線の向こう側には物質的には何も存在しない。何もかもが、ある一点に吸い込まれてしまうからだ。この点を称して「特異点」という。
 ブラックホールには確かに物質的には何も存在しないが、莫大な物質をのみ込んだ特異点には無限大の質量があり、ブラックホールにはその質量によるすさまじい重力が存在する。
 この、何もかものみ込んでしまうブラックホールが蒸発するという。車椅子の天才、あのホーキングが唱えた。
 彼によると、ブラックホールの近傍の空間でも量子的なゆらぎは生じるため、粒子と反粒子からなる対粒子(本章の8参照)が現われるという。そして、対消滅する前に反粒子がブラックホールに落ち込むと、あとに残された粒子は、あたかもブラックホールから飛び出してきたかのように見える。量子的なゆらぎから対粒子が発生するのが許されるのは、プランク時間のような超極微な間だけにかぎられるのに、これだと現実に粒子が誕生したことになってしまう。そのつじつまを合わせるためには、ちょっと乱暴ではあるが、実在の粒子が本当にブラックホールから飛び出してきたとすればよい。そう考えてもよいことをホーキングは数学的に示した。
 こうしてブラックホールからは粒子が放出され、ブラックホールは質量を失っていく。ホーキングが導いた式によると、ブラックホールの質量と温度とは反比例するので、質量を失っていくブラックホールの温度はだんだんと増大していく。そしてしまいにはすごい高温に達して大爆発を引き起こし、ブラックホールは消滅してしまう。
 ただし、このようなことが起こるのは宇宙の初期に誕生したミニブラックホール*についてだけで、星が収縮してできるような大きなブラックホールでは、減少する質量をはるかに上回る宇宙物質を吸収するから、ブラックホールは成長しつづけるという。ちなみに、ミニブラックホールの存在の可能性を指摘したのもホーキングだ。彼はもともとブラックホールの研究者であり、ブラックホールに関するいろいろな新説を連発している“ミスター・ブラックホール”なのだ。

* ホーキングによると、宇宙初期につくられたブラックホールのうち、質量が一〇億トン、半径が一〇兆分の一cm以上のものは現在もまだ生き残っている可能性があるという。

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17.超ひも理論は、二一世紀の新しい物理学か?

  今、素粒子論と宇宙論でもっともホットな話題といえば超ひも理論であろう。
  超ひも理論の基本的なアイデアは、「自然界のすべての物質と力の大もとは点状の素粒子ではなく“ひも”からなる」というものだ。素粒子の世界では、新粒子の発見や予言によって粒子の種類はどんどん増えていく一方である。それらの新粒子に対しては一応の説明はつけられるものの、果たして粒子の種類には際限があるのかという疑問が残る。これに対し、超ひも理論では、この宇宙にはただ一種類のひもがあるだけだという。
 超ひも理論の原型は、シカゴ大学の南部陽一郎によって考え出された。陽子を形成している三個のクォークは、ひもで固く結ばれているという大胆な仮説だ。これまでとはガラリと異なるユニークな粒子像を提案したこのひも仮説は、それまで不可解であったいくつかのことをうまく説明できたので注目を浴びたのだが、ひもは何と二五次元空間で振動しなければならないといった、理解に苦しむような場面も出てくることがわかった。また、出てきてはならない禁忌なども見つかって、このひも仮説はいつしか忘れ去られていった。
 ひも仮説に代わって登場したのはゲージ理論である。粒子を結びつけるものはやはり粒子であるとし、粒子の間に働く力はゲージ粒子と呼ばれる粒子の交換によって生ずるとする。この理論にしたがえば、重力もゲージ粒子によって仲介されてもいいはずである。ところが、この理論に沿って重力を記述しようとすると、理論の中に多くの無限大量が出てきてしまうことが判明した。日本の朝永振一郎が無限大量を処理するために考案した「くりこみ理論」をもってしても手におえなかった。重力がきわめて特殊な力であることは以前からわかっていたが、その壁はゲージ理論をもってしても崩せなかったわけである。
 ここで、突如として現われたのが超ひも理論だった。南部陽一郎のひも仮説を研究していたわずか数人の研究者のうち、アメリカのジョン・シュワルツとイギリスのマイケル・グリーンは、南部陽一郎のひも仮説に、その後発表された最先端の理論をとり入れ、ひもの長さをプランク長さ(10-33cm)にまで縮め、空間を九次元とした超ひも理論を提案したのである。超ひもは一次元なのに、空間は九次元という奇妙な世界で成り立つものだった。
 超ひもは、九次元空間でねじれ、回転し、スピンし、振動し、さらに結合したり分離したりといったように、人間の心で想像可能なあらゆる運動ができる。また、超ひもの振動によって、自然界の四つの力、すなわち重力、電磁力、弱い力および強い力のすべてが生ずる。各々の力の相違は、振動モードの違いで説明できるという。そして超ひもの運動は、プランク長さよりもずっと大きい距離をおいてみれば、ゲージ理論でいうところのゲージ粒子のふるまいとまったく同等なものとなる。つまり、ゲージ粒子が出現し、力を仲介する形となる.。
 こうして超ひも理論は、ゲージ理論では説明困難であった重力を仲介するゲージ粒子、すなわち重力子をも他の三つの力とともに同じ理論で矛盾なく記述してしまったのである。まさに四つの力の“超統一”だ。これは、過去のいかなる天才もがなしえなかった一大椿事なのである。
 この超ひも理論に、南部陽一郎のオリジナルひも理論を融合させたヘテロ超ひも理論も出現している。四つの力を仲介するゲージ粒子だけでなく、物質の構成材料となるすべての素粒子も、最終的にはヘテロ超ひもの振動に帰着するという。
 このヘテロ超ひもは輪ゴムのように閉じており、左回りと右回りで振動する。左回りでは二五次元の自由度をもつ振動が可能で、その振動により重力子以外のすべての粒子を出現させる。また、右回りでは九次元の自由度をもつ振動が行なわれ、その振動によって重力子を出現させる。左回りにおける二五次元のうちの一六次元は、ひもの内部にあるという。外から見たひもは九次元で振動し、内から見たひもは一六次元で振動するというわけだ。
 さて、超ひも理論では、宇宙は九次元の空間として誕生したとする。その宇宙には一次元の超ひもだけが存在し、力はまだ分化せずに一つに統一されていた。この宇宙は時間とともに膨張するが、プランク長さの大きさにまでなる10-44秒(プランク時間)が経過したとき、超ひもは重力子を出現させた。重力がまず分化したわけである。
 その後、九次元空間のうちの三次元はそのまま膨張をつづけたが、残りの六次元は膨張することなく、プランク長さの大きさのままであった。これのごくおおまかな描像を得るために、四角形を思い描いてみよう。この四角形を横に三分割してこれを三次元空間、縦に六分割してこれを六次元空間とする。三次元空間の大きさは縦方向の長さ、六次元空間の大きさは横方向の長さである。四角形はプランク長さの大きさとする。つまり超ミクロなので認知のしようがない。この四角形が縦の方向に均等にビョーンと伸びたとする。三次元空間が膨張するわけである。横方向の長さ(六次元空間の大きさ)はそのままなので、四角形全体として見ると長く伸びた線が一本あることになる。この線というのは、認知はできないけれども六次元空間をともなっている・・・。
 どうであろう、少しはイメージできたであろうか。超ひもは、こうした九次元空間で運動するのである。ヘテロ超ひもの場合なら、ひもの内部も合わせて二五次元だ。
 誕生したばかりの宇宙では、重力が分化したあと強い力が分化し、次いで弱い力と電磁力が分化した。そのプロセスを担って超ひもはさまざまなゲージ粒子を出現させ、またクォークやレプトンなど物質の基本構成材料となるフェルミ粒子も出現させた。
 超ひも理論は、これまでは謎だった素粒子がもついろいろな性質、たとえば、量子色力学*でいうところのクォークの色(赤・青・緑)がどうして現われるのかも説明するという。超ミクロな六次元空間における超ひもの振動の向きのあり方で、クォークの色が決まるらしい。
 こんなわけで、超ひも理論は、現在の素粒子論で課題となっているさまざまな難題をほとんど解消してしまうらしい。ただし、超ひも理論で扱う数学は、ほとんど誰にも解けないような超難解な代物である。また、物質をこの理論が予言する超ひもにまで分解できるような粒子加速器は、とうてい製作不可能である。つまり、超ひもの存在は実証できそうにない。こんなところから、この理論に対しては、「単なる数学の遊びであって、物理ではない」という批判の声もあがっている。
 二一世紀の新しい物理学が、少し早く出すぎてしまったのかもしれない。

* 量子色力学とは、自然界の四つの力のうちの強い力を扱う分野である。色力学というネーミングからもわかるように色の概念がとり入れられているが、もちろん本当に色がついているわけではない。このアイデアも南部陽一郎が考え出したしたものである。

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18.銀河はやがて、ひっそりと死ぬ

 宇宙には数千億個の銀河があるという。個々の銀河には一〇〇〇億とも二〇〇〇億ともいわれる星々が含まれるから、気の遠くなるような星の数だが、それでも宇宙全体からみれば、ヨーロッパ大陸にハチが三匹といった程度でしかない。宇宙はほとんどカラッポなのだ。
 銀河には、星々とともにガスやチリからなる星間ガスが存在するが、レンズ状銀河のように、ガスをほとんど失っている銀河もある。  銀河の大きさは数万から数十万光年だ。私たちの太陽系が属する「銀河系」は、比較的大きい部類に属する銀河である。
 銀河はバラバラに存在しているわけではない。数個から数千個ずつの集団をなして分布している。数十個までの小さな集団を「銀河群」といい、数百から数千個の大きな集団を「銀河団」という。また、銀河団の分布にも数十個規模で片寄りが認められており、これを「超銀河団」と呼んでいる。
 それぞれの大きさは、銀河群が数百万光年、銀河団が数千万光年、超銀河団が数億光年だ。そしてさらに、これらの銀河集団がシャボン玉の泡に貼りついたように連なって、四億光年ごとにフェンスのように規則正しく並ぶ宇宙の大規模構造がある。
 銀河の集団がいかに形成されたかについては、ボトムアップ説とトップダウン説がある。ボトムアップ説では、宇宙ではまず無数の銀河が生まれ、それらが重力で集まって銀河群や銀河団を形成し、さらにそれらの集合体として超銀河団や宇宙の大規模構造ができたとする。トップダウン説では逆に、まず大規模構造となる巨大なガスの塊ができ、それが超銀河団の素になる塊に分かれ、それがさらに銀河団や銀河群、そして銀河へと分かれていったとする。
 銀河の種類には「渦巻き型」「棒状渦巻き型」「楕円型」「レンズ型」「不規則型」などがある。楕円型やレンズ型の銀河は老年の銀河で、新しく誕生する星はほとんどない。不規則型銀河は、何らかの衝撃を受けて変形させられた若い銀河だ。渦巻き型の銀河は中年の銀河といったところで、私たちの銀河系は渦巻き型である。
 銀河どうしは衝突することもありえる。衝突して分かれたあと奇妙な形になってしまったり、 分かれずに合体して中心核を二つもつ銀河となり、膨大な数の星からなる多くの星団を誕生させたりする。
 星と同様、銀河もいつかは死を迎える。銀河に含まれる星々の大部分が死滅して、白色矮星、中性子星、ブラックホールなどで占められるようになれば、それが銀河の死だ。寒々しくも、身の毛のよだつような光景ではある。

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19.私たちの銀河系は、こうなっている

 銀河系は、英語で Galaxy とも Milky Way とも呼ばれる。Galaxy というのはミルクを表わすギリシア語からきているので、Milky Way となったわけだ。日本では「天の川」と呼ばれる。
 通常、天の川というと夜空に延々と連なる星の長い帯を指すが、この天の川の姿というのは実は、銀河系をほぼ真横から見た姿なのである。といっても、太陽系は銀河系の中心から二万八〇〇〇光年をへだてたところに位置するので、そこから見た銀河の姿である。
 銀河系の中心は、天の川でもひときわ明るい「いて座」の方角にある。また、天の川のところどころには真っ黒な穴があいているが、そこは何もないのではなく星間分子雲、いわゆる暗黒星雲が漂っている。新星はここから生まれる。
 銀河系全体の形状は円盤形で、中心部はアンパン形に膨らんでいるとされるが、棒状だという説もある。
 銀河全体は、銀河中心のまわりを渦巻くように回転している。大きさは一〇万光年だ。中心部には年老いた星が多く、外側の円盤部分には比較的若い星が集まっていると考えられている。
 銀河の回転の様子は、中心部と円盤部とではだいぶ異なる。中心部の回転はひもを振り回すような感じで、星々はそのひもに沿って一直線に並んで回転する。これらの星々の回転する速度は、中心からの距離に比例する。一方、円盤部の星々は、多少の差はあるもののすべてがほぼ同じ速度で回る。このため円盤部においては、外側の星が一回転する間に、半径が半分しかない内側の星はその運行距離に合わせるために二回転することになる。
 円盤部には波も立っている。この波は星の運行とは関係なく、一定のスピードで渦を巻きながらゆっくりと銀河を一周する。星々は、この波に遭遇すると運行速度をいったん落とす。そのため、そこだけがとても明るくなる。渦巻き型に明るくなるわけで、渦巻き型銀河の渦巻きの正体とはこれである。星が実際に渦巻き運動をしているわけではない。
 銀河中心の狭い領域には、太陽質量の二五〇万倍もの質量が集中している。このことは前から予想されていたことだが、ドイツのマックス・プランク研究所の四年にわたる「銀河中心部の星の直接観測」によって改めて確認された。それまでは、銀河中心部の星の視線速度により間接的に重力を見積もっていたのである。この銀河中心部には赤外線源もいくらかはあるが、ほとんどはダークマターで占められている。おそらく、ブラックホールであろうと考えられている。
 銀河系からもっとも近い銀河は、一七万光年の彼方にある大マゼラン雲と小マゼラン雲である。ともに不規則型銀河だ。この両マゼラン雲は実は銀河系と陸つづきで、銀河系を主銀河とする三重銀河を形成している。マゼラン雲に次いで銀河系から近い銀河は、ロマンチックな名前で知られるアンドロメダ銀河だ。二一二万光年の彼方にある。二〇万光年の大きさを有する渦巻き型銀河で、銀河系とよく似た構造をしている。この銀河もまた、三重銀河の主銀河となっている。

※イラストはNASDAホームページ「オンラインスペースノート」(http://spaceboy.nasda.go.jp/Note/Note_j.html)より引用

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20.この銀河系には、知的生命体の住む星がいくつあるか?

 この宇宙には、少なく見積もっても一〇〇〇億個以上の星を含む銀河が数千億個ある。その宇宙に、「地球のような星がたった一つ」というのはありえないとするほうが、物理的にみても数学的にみても妥当だと思われる。もし、ただの一つしかないのだとすれば、神の存在を信ぜざるをえない。
 もし地球のような星がほかにもあるとすれば、人間のような知的生命体も出現しているに違いない。その可能性を方程式で表わしたらどうなるかというので、アメリカの天文学者であるフランク・ドレイクは、宇宙文明方程式(ドレイクの式)なるものを導き出した。式は次のような変数からなる。
 @銀河の歴史を通じて恒星が誕生する平均速度(一年あたりの平均数) Aその恒星が惑星系をもつ確率 Bその惑星系内で生命体が発生しうる星の数 Cその星で実際に生命体が発生・進化する確率 Dその生命体が知的生命体にまで進化する確率 Eその生命体が他の異星文明に対しコンタクトをとりうるほどの高度な技術文明を発達させる確率 Fその高度な技術文明がどれほど長つづきするかの平均寿命
 これらをすべてかけ合わせればよい。まず、一年あたりに誕生する恒星に対して、他の異星文明とコンタクトをとりうるほどに高度な技術文明を発達させうる知的生命体が存在しうる惑星の存在確率を考え、そのような文明がどれほど長く持続するかという平均年数をそれに乗じている。つまり、一年あたりに誕生するであろう「文明を発達させうる星」の数に、その文明の平均寿命を乗ずることによって、銀河の歴史を通じてそうした文明をもつ星がいくつ存続しえるかを求めているわけである。
 では、実際に試算をしてみよう。@は、銀河系の恒星の数を銀河の年齢で割ったものだ。銀河系の恒星の数は一五〇〇億個程度と見られており、銀河系の年齢が宇宙の年齢(一五〇億年)とほぼ等しいとすれば、答は一〇となる。Aは、地球のような惑星は太陽とほぼ同じ質量をもつ恒星でないと誕生しないという説もあるので、そのような恒星の誕生確率を〇・〇五としてみる。さらに、惑星系をもつ恒星は連星*1ではなく単独星であるとし、単独星が生まれる確率を〇・一と見積もる。そして、これらの確率を乗じて〇・〇〇五を得る。Bは、太陽系と同様と考えると一だ。Cは、地球と同様と考えると一になる。Dも、地球と同様と考えると一である。Eは、知的生命体にまで進化したのなら、この程度の技術はおのずと発達させられるだろうから、これも一とする。Fは、知的生命体の惑星に天変地異が起こらないかぎり、技術の継承は末永く行なわれるだろうから、まあ一〇〇〇年としておこう。
 結果は五〇個と出た。銀河系だけで五〇個である。全宇宙を含めたら、果たしていくつになるのやら。
 この五〇個の星とは、何らかの形でコンタクトをとれる可能性がある。例のドレイク博士も、自らオズマ計画を指揮してそれを試みた*2。しかし、目ぼしい結果は得られなかった。その後も同様な試みはなされたが、議会の反対などもあって今は開店休業といった状態である。

*1 互いの引力に引かれ合って、共通の重心のまわりを公転する複数の星のこと。
*2 太陽系に近く、太陽系によく似た星々に電波信号を送り、二カ月間(延べ一五〇時間)、相手からの反応を待った。

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21.人間原理の宇宙論とは何ぞや?

 一七世紀のフランスの数学者であり哲学者でもあるデカルトは、「われ思うゆえにわれあり」といった。この「われ」を宇宙に置き換えてみよう。「宇宙思うゆえに宇宙あり」となる。
 宇宙に宇宙思惟といったようなものがあれば、宇宙は思うかもしれない。でもそんなものはないとすれば、さしずめ「宇宙=神」として「神思うゆえに宇宙あり」といったようなことになろう。だが、神はいないとする立場からはどうなるのか。「思う」ことのできる残された存在は“ひと”だけだということにはならないか。だとすれば、「ひと思うゆえに宇宙あり」というところへいき着く。ひとの最小単位は「われ」である。よって、最終的には「われ思うゆえに宇宙あり」となる。
 冒頭でやったデカルトの格言の「われ」への置き換えを、宇宙や神やひと以外のものでやってみたらどうなるか。たとえば、キリンと置き換えてみると「キリン思うゆえにキリンあり」となる。しかしキリンは、自分が“キリン”であることを知ってはいない。それがキリンであるというのは、人間が決めたことである。つまり「ひと思うゆえにキリンあり」なのだ。これは対象がキリンでなくても万物のすべてにあてはまる。そして「万物=宇宙」であるとするならば、結局は「ひと思うゆえに宇宙あり」ということに帰着する。
 この宇宙には、プランク定数、光速、基本電荷、重力定数など、さまざまな物理定数が存在する。これらの物理定数がもし、今の値よりもほんのわずかでもずれていたなら、この宇宙には生命は存在せず、したがって人間も存在していなかったろうという。これはあたかも、生命そして人間が存在しうるがごとく、この宇宙が存在しているかのようである。
 またこれらの定数は、人間が導き出した法則や理論、そして人間が行なった実験や観測に基づいて得られた値なのであるから、人間が創出したものだともいえる。あえて極論するなら、この宇宙は、人間がやがてひねくり出すであろう法則や理論そして定数に支配されるがごとくに出現したかのように見える。ひと思うがゆえに法則があり、その法則にしたがって宇宙が存在するというわけである。
 そして先にもいったように、宇宙を思い、認識することのできる存在は人間だけである。認識されない宇宙はあってもないのと同じだ。結局のところ、いき着くのは「ひと思うゆえに宇宙あり」である。これを「人間原理の宇宙」という。
 一種の知的遊戯と考えるとよい。

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<コラム>
世界最高性能の望遠鏡「すばる」がハワイに


 文部省国立天文台が大きなことをやってくれた(もちろん税金を使ってだが)。標高四二〇〇m、空気の澄んだ人工光が少ないハワイのマウナケア山頂に、あのハッブル宇宙望遠鏡をもしのぐ能力をもつ大型反射望遠鏡を完成させる。主鏡が一枚の鏡で構成される望遠鏡としては世界最大の口径八・二mを誇る。アメリカの有名なパロマ山天文台の大望遠鏡でも二〇〇インチ(五m)どまりだから、いかに大きいかがわかるだろう。東京から一〇〇km離れた富士山頂の野球のボールを見分けることができ、一〇〇億光年の彼方からやってくるかすかな光も受け止められるという。総工費は四〇〇億円だ。
 近紫外線から可視光、赤外線までの波長(〇・三〜三〇マイクロメートル)の光をとらえて宇宙の果て近くの銀河を観測し、宇宙開闢期のドラマを描きだす。星間物質にさえぎられて見えない原始星の誕生の現場にも、赤外線をとらえることで立ち会えるかもしれない。太陽系以外の惑星系の発見も期待されている。
 ところで、ハワイのマウナケア山頂というのは、世界の天体観測のメッカとなっている。日本のすばる望遠鏡のほかに、ハワイ大学の二・二m鏡、カナダ・フランス・ハワイの三・六m鏡、カリフォルニア工科大学の一〇mケック望遠鏡、NASAの三m赤外線望遠鏡、イギリスの三・八m赤外線望遠鏡、建設中の八mジェミニ望遠鏡など、大きな望遠鏡がひしめきあっており、観光名所ともなっている。ケック望遠鏡の反射鏡は世界最大であるが、貼り合わせのモザイク・ミラーなので、性能はすばるのほうが上回る。
 すばるは、一九九九年一月二九日、星の光を初めてとらえるファーストライトに成功し、ハッブル宇宙望遠鏡に劣らない高性能を証明してみせた。


マウナケア山頂の天文台群(1997.7現在)

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